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高潮とは

研究対象の1つである高潮について
今後専門外の方にお話する際のまとめとしてここに記述する.

専門的な用語や数式についてはなるべく使用を避けて記述しているため,
より正確な知識が必要な場合は参考図書等の利用を勧める.

【1】高潮について

気象庁の説明によると・・・

「台風や発達した低気圧が通過するとき、潮位が大きく上昇することがあり、これを「高潮」といいます。」

ということである.

キーワードとしては,
①発達した低気圧(台風は熱帯低気圧なので,大枠として低気圧に含まれる)
②潮位の上昇
である.

日本では,太平洋側では台風,日本海側(北海道等)では冬季の爆弾低気圧によって引き起こされる例が多い.

実際の事例では,
①1959年 台風Vera(通称:伊勢湾台風)
②2018年 台風Jebi(大阪港で最高潮位329cmを記録した台風)
③2014年12月 爆弾低気圧(北海道東部で高潮被害発生)
などが挙げられる.

では,実際に高潮について説明する.

【2】高潮の仕組み

高潮は大きく分けて2つの要素から成る.

①吸い上げによる潮位上昇
②吹き寄せによる潮位上昇

①吸い上げによる潮位上昇は,一般に「吸い上げ効果」とも呼ばれる.
台風のような気圧が低い現象が襲来した際に,気圧降下量に応じて発生する.

海面水位と気圧の静的なバランスより

ρg∆h∙A=∆p∙A
 
ρ:海水密度,g:重力加速度,∆h:海面上昇量,A:面積,∆p:気圧降下量
で表すことができる.

気圧降下量とは,平時からの気圧降下を意味しており,概ね1013hPa-台風中心気圧で計算される.

この式を∆h=の形に整えると,

∆h=∆p/ρg

となる.
ここで,∆p=1.0 [hPa]を仮定すると

∆h = 1.0 / (1.0 [g/cm3] × 9.8 [m/s2]) ≒ 1.0 cm

と計算することができる.
したがって,1hPaの低下で海面は約1cm上昇するということになる.

続いて,②の吹き寄せによる潮位上昇について.

台風や低気圧が湾に接近すると,強い風が吹く.湾奥に向かって強い風が継続して吹くことで海面上昇が起こり,これが吹き寄せによる潮位上昇となる.

強風による風応力と海面勾配力のバランスより

g∙∂η/∂x=  τ/ρh

が成り立つ.
ここで,η:海面変動量,τ:風応力,h:水深
これをη=の形に整え,海岸から沖合までの距離L(0からL)で積分すると

η=τ/ρgh∙L

の式を得ることができる.

ここで,τは風速の2乗に比例することから,
吹き寄せによる潮位上昇は,風速の2乗に比例することがわかる.
また,水深には反比例することから,

水深が浅い湾で,遠浅の海岸において,強い風が吹く

ということが高潮が大きくなる要素といえる.

高潮による潮位上昇量=①吸い上げによる上昇 + ②吹き寄せによる上昇

で計算される.

以上の式により得られた潮位上昇量を潮位偏差(または高潮偏差)と呼び,
通常の潮汐による潮位変化を天文潮位と呼ぶ.

したがって,高潮による最高潮位などと言う場合は,

高潮 = 高潮による潮位上昇量 + 天文潮位

となっている.

例えば,2018年台風Jebiによる高潮を例に説明すると,

高潮偏差は277cmであり,これに天文潮位52cmを足すことで,
観測された最高潮位329cmとなる.

【3】まとめ

(1)高潮による潮位上昇(高潮偏差)は
①吸い上げ効果 (1hPa低下で1cm上昇)
②吹き寄せ効果 (上昇量は風速の2乗に比例)
の2つの要素から成る.

(2)一般的に高潮とは
高潮 = 高潮偏差 + 天文潮位
で算出される.

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